北京の広安門病院研修の続きですが、これは腎臓病科の診察室です。
赤い服の方が患者、その左で脈を診ているのが女性医師。それを取り囲んでいるのが私たち日本の研修グループ。データはすべてコンピュータに打ち込まれます。
この患者は、わずかの血尿データの結果を必要以上に気にしているのです。
そんな患者の不安を、女性医師は根気よく話を聞き説明をしており、そして今日の処方内容は、止血対策だけでなく、不安を取り除く生薬を配合しており、病名にとらわれない体全体を観る漢方対策をしっかり行っています。
紫色の上着を着た女性は、高齢なお母様(90歳以上)のためにいらした方。
前回服用した漢方薬でずいぶん調子がよく、また処方してもらいたいとのこと。医師が書き込んでいるノートは、前回紹介した『お薬手帳』みたいなもの。
さらにこの方は、お母様が現在はどのような症状があるのかをきちんとまとめて書いた紙をもってきています。
前回の漢方薬を服用して、たとえばすっきり眠れるようになった、最近では少しめまいが気になる、など具体的な状態をはっきり医師に伝えます。
これに対応して、漢方処方を加減(前回の処方内の生薬の入れ替えを行う)します。
この研修では最新の漢方治療を学ぶのが目的でしたが(もちろんそれも十分できましたが)、それ以前の、病気とその治療に対する患者の意識の高さに感動しっぱなしでした。そして患者と医師がしっかりタッグを組んで病気に立ち向かっているという姿勢は素晴らしいです。
日本の医療現場では、もっぱら医者任せで自分の服用している薬の名前や作用さえ
あまり知ろうとしていないことが多い気がします。
日本では手帳に薬が書かれたシールをただ貼るだけ。とりあえず薬のんでるからと安心し、そして、まだ治らない、仕方がない、とりあえず医者の薬を飲んでるからほかの努力はしない、と丸投げ状態のこともしばしばではないでしょうか。
中国医療のこの姿勢はおそらく、体も自然と一体であるという漢方的発想がしっかり根付いているからだと思います。